※ こちらは、読んだ書籍の備忘録です ※
今回の書籍
『ボロボロになった人へ』
著者:リリー・フランキー とは
リリー・フランキー ■ 超マルチ人。
1963年 福岡県生まれ。武蔵野美術大学 造形学部芸能デザイン学科を卒業し、始めはイラストレーターとして5,000円くらいの仕事を月数本していた。その後は、ラジオの放送作家や、森高千里のCDジャケットのイラスト担当、雑誌ぴあの「あっぱれB級シネマ」からの自伝的小説「東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~」など文筆業、ミュージシャン、作詞・作曲、デザイナー etc…本当に多様な才能を発揮。また、映画初主演「ぐるりのこと」でその演技力も高い評価を受け、数々の映画・TV作品・舞台などで俳優としても活躍。最近では、第71回カンヌ映画祭でパルム・ドール賞を受賞した是枝監督作品「万引き家族」にも、主演の1人として出演。
テレビ朝日「樹木希林さん特別番組~おもしろうて、やがて不思議の樹木希林~」より
追悼番組で。元々自身のモノだったが、結果として形見になった服を着ての登場。
「そう言われてみると、俺、最近なにで食ってるんだろう?」雑誌インタビューにて
読後の単なる感想
設定やストーリー展開のアイデアにエグられる。ギリギリを攻めてくる印象。人間がもっている、卑しさとか残酷さとか狂気とかのマイナスなエネルギーと、善良さとか希望を見つけた時の輝きとか変わることのできる強さとかのプラスのエネルギーを、ぎりぎりのシチュエーションを設定し動かせることで描きだしていている、ように感じた。人間の混沌さがありありと見えて、とにかくディープ。
書籍タイトル名になっている、「ボロボロになった人へ」より。
戦争下、町から離れたあばら家で1人、しばらくろくに食べ物を口にしていない主人公 フィーゴ。地雷で右脚が吹き飛んだ。左足は柱の角にぶつけて爪が真ん中から割れ、半分ぶら下がっている。戦争で何か変わると思ったが何も変わらない。そんな中でじっと考える。
最後に、何かできないものだろうか。
最後に、何か凄いことをひとつでも残せないものだろうか。
(中略)
この町のすべての人々のために、最後に、何か、とてつもなく良いことを残して逝きたい。
(中略)
しかし、何も思いつかない。どうしたらよいのか、わからない。悪事は考えついても、善行は絵空事しか浮かんでこない。
(中略)
することも、逝くこともできず、ずっと考えているだけで、フィーゴの爪だけは、それから何度も再生した。
一見穏やかそうな空気感。そのバックにある、何というかくぐってきてる感というか肝の据わりよう。リリー・フランキーには、以前から謎めいた印象を持っていた。
本作を読んだことで、「謎めいた」という淡い状態から、謎になった。
それは、なんでも引き受けるスタンスのリリー・フランキーならではの、実体験の多さからくるのか?いや、冷静にシビアに、取り繕うことなく、社会や人を観察する眼・思考力があるからなのか・・・。見方・考え方の次元が違う。
でもまだまだ、きっとほんの一部。
リリー・フランキー。今後もいろんな側面をとらえていきたいと思う人だ。