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ハードボイルドを味わう「顔に降りかかる雨」/1996年 桐野 夏生 著

目次

 

概要

『OUT』('98 日本推理作家協会賞 受賞)、『グロテスク』('03 泉鏡花文学賞 受賞)、『東京島』('08年 谷崎潤一郎賞 受賞)などを手掛けている、桐野夏生の、比較的初期に書かれた作品。

 

本作では、1993年 江戸川乱歩賞を受賞している。ロマンス文学などを書いていた桐野夏生が、新境地を開拓した作品という位置づけにある。

 

新装版 顔に降りかかる雨 (講談社文庫)

新装版 顔に降りかかる雨 (講談社文庫)

  • 作者:桐野 夏生
  • 発売日: 2017/06/15
  • メディア: 文庫
 

 

Recomend Points

「いやな夢を見ていた」。書き出しのフレーズから惹き込まれる。

ジャカルタで?夫の死って?そして、友人の失踪事件に巻き込まれていく主人公。

 

何が起きているのか、何が起きていくのか。

興味を惹かれて一気に読んでしまう。確か本を購入したのは大学生の時。しかもBOOK OFFで見つけ、その場で100ページ超えて読んでしまい、慌てて購入した記憶がある。ブログを書くにあたり、再度読み直ししたがやはり一気読みしてしまった。

 

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年季の入った所蔵品

 

魅力的な人物像。

新宿・歌舞伎町の一角、父親が営んでいた探偵事務所の元オフィスに1人で暮らす主人公・ミロ(女性)。無職だが「私は自分をコントロールできますから」と言い切り、極道者に凄まれても怯まない。

 

失踪した友人・耀子からは「ミロはさ、自由でいいよね。(中略)ミロみたく、何の欲もなく空気が抜けてみたいよ」と評される。腹の奥には夫に死なれた過去の重しのようなものを抱えながらも、自分を生きている、と言えるような姿に惹かれる。

 

他の登場人物も総じて濃いめのキャラクターで、面白い。

 

友人・耀子は「高卒魂」をバネにのし上がってきた、パワフルな人物。体当たりのルポルタージュで小説家としての新境地を開いたやり手として描かれている。

 

主人公と一緒に耀子探しをする成瀬は、東大全共闘の活動家で頭は切れるが、東京拘置所上がりでヤクザとパイプを持つ、裏社会に近い人物。風貌は男らしく精悍ないい男に描かれている。

 

他にも、鍵を握るキーマンだがぶっとんだ川添桂先生や、ちょい出の元探偵の親父さんのレイバンが似合う渋い描き方などもいい。

 

ある種、怖いもの見たさの心境。

読み進めるほどに、描かれていく世界が、どんどんコアになっていく。フィクション作品だが、モデルとなった現実がきっとあると思うと、非日常の世界に興味が止まらない。多分自分の読むペースが速くなるからかもしれないが、どんどん加速していく感覚があり、ぜひその辺りも堪能していただければと思う。